日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

2019年12月14日「動詞表現」ではなく「動作表現」を使う


浅田すぐるさんというコンサルタントの著書に「すべての知識を『20字』でまとめる」という本があります。

とても参考になることが書かれている本で、私は折りに触れ読み直しています。

今回はこの本に書かれていることで、特に私が「なるほど!」と思ったことをご紹介します。

それは、行動に移したいなら「動詞表現」を「動作表現」にする、ということです。



私たちは、日頃から人や組織に動いてもらうために、話をしたり、文章を書いたりしています。

しかし、思い通りに人や組織が動かない、ということは実に良くあることです。

思い通りに動いてくれることがほとんどない、といってもよいかも知れません。

浅田さんは、その原因の一つに、我々が一般的に「動詞表現」を多用しているからではないか、と考えています。

「動詞表現」とは、例えば、

・目的を意識しよう

・組織に浸透させよう

というものです。

一般的によく使う表現です。

しかし、この表現では、何をしたらいいのか、具体的な行動がわかりません。

これに対して、「動作表現」というのは、

・意識したい目的が書かれた紙を朝出勤したら必ず見よう

・組織に浸透させたいメッセージを毎日全員で唱和しよう

というものです。

浅田さんは、このような「行動に移せるレベルの表現」を用いるべきだと説いています。

 

確かに、人間の行動とは極めて具体的なものです。

単に「曲がれ!」と言われても戸惑いますよね。

「次の交差点の手前を左に曲がれ!」

などと具体的に言われないと、道を曲がることもできません。

しかし、私たちはビジネスにおいて、この「曲がれ!」レベルの話をしていることが多いのではないでしょうか。

それは、「曲がれ!」と言えば、どこでどのように曲がるのかは、言われた人が判断するだろう、と考えているからだと思います。

しかし、人は抽象的な話を聞いて、それを具体的に行動レベルまで咀嚼できることはまれです。

だから、いくら言っても、他の人や組織が曲がってくれない。

言った人は「何故曲がらないんだろう・・・」と思っている。

例え話で恐縮ですが、このようなことが職場で日々繰り広げられているのではないか、とこの本を読んで、改めて思いました。

 

そして、もう一つ気付いたことがあります。

それは、日本話し方センターの話し方教室では、この「動作表現」で受講生の方々に行っているアドバイスが多いということです。

「家でスピーチ練習をしてください。」ではなく、

「家で声に出して、30回以上、時間を計ってスピーチ練習をしてください。」

とお願いしています。

また、

「もう少し高い声で話した方が、声の通りがよくなりますよ。」ではなく、

「地声が『ド』の音だとすると、『ソ』か『ラ』の音で話してください。」

とアドバイスしています。

こうしたことも、60年以上続いている私たちの教室の強みなのではないか、と改めて思いました。
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